2017年5月アーカイブ

事実と思想を混乱し

 既に時間がたってしまったけれど、里親がウンヌンいうニュースが流れていましたね。
 これについては、多少昔の記事で触れたことがある。それ以外にも思うことはあるけれど、おいおい気が向いたら書くかもしれない。書かないかもしれない。


 さて、先日はD夫人と呼ばれる誰かさんが、無知をさらす代表者のような発言をしていましたね。これに対する指摘は、既に過去に繰り返している。発言内容は支離滅裂で、「結婚」と「自然の摂理」を同列に扱うことの不合理性にも思い至らないご様子(より正確に言い直せば、「個人の結婚観」と「客観的・自明的な自然の摂理」でしょうね)。
 わからないならわからないで、思っているだけで口に出さなければまだマシなのだが、そもそもこうした人たちは「自分にその知識がない」ということがわからないので、なかなかやっかいだ。
 きっとこの類いの発言は、この先まだまだ、ウン十年を越えて続いていくんだろうなー。

 そういえば...というにもちょっと遅すぎるし、これとは毛色が違うのだけど、さらに前のもので、別人による以下のような発言もありました(内容の直接的な色は違うが、根っこは交差する)。

 まるまる引用いたします。

トランスジェンダーの問題。しばしば、彼ら彼女らについて、「あの人は病気じゃありません!そう指摘するのは差別です!」「政府は彼女を正常だと認めて下さい!」と言っている人達がいるが、その彼女に必要なのは、政府のお墨付きではなく、治療だと思う。

レズ、ゲイ、バイセクシャルは「性癖」です。彼ら彼女らは法的に保護されるべきだと、一部の人たちが主張しているが、なぜ個人の趣味である「性癖」を法で保護しなければならないの?じゃあ、SMクラブに通ってるサラリーマンも、国で保護しなきゃね。サドもマゾも性癖なんだし。


 引用、ここまで。

 いやー、何を言っているのか、まったくわかりませんねぇ。指摘や引用が四方八方にズレていることもさることながら、なんら根拠のない発言ですね。
 この発言主個人についてどうこう言う気はない。そこはほっといて、発言内容は意味不明な典型例のひとつなので、これをネタにしてみよう。
「政府は彼女を正常だと認めて」というくだりなどは別の意味で違和感があるんだけど、それは横に置いておきますね。

 言ってることは読んだままなのだけど、ポイントを要約的に簡単にしちゃうと「トランスジェンダーは病気だから治療せよ」「ヘテロ以外のセクシュアリティは性癖・趣味であって、SM と同じもの」「性癖・趣味であるセクシュアリティを保護するなら、SM 癖者も保護せねば(たぶん風刺的な意味で)」というわけですね。
 サッパリちんぷんかんぷんです。事実に基づいていないので。自分の思い込みや決め付けで、好き勝手言っちゃってます。めちゃくちゃ歪んだ、事実を無視した思想です。

 ひとつ、注意を差し挟みます。
 先の「トランスジェンダー」は「性同一性障害(者)」を指しているものと思われますが、ここらあたりの正確さについては、ひとまず横に置いておくといたします。

 残念ながら、妄執に捕らわれた人は、哀れなほど自分の思い込みから逃れられない。この類いの主張をする人には、そんな人が多い。
 性的指向性は、誰にだって備わっている。それがなかったら、ヘテロだって男が女を、女が男を好きにならない。好きになることができない。ゲイとヘテロは、ここが逆なわけですね。ただし、この性的指向性が一方向だけに向くわけじゃない人とか、どこにも向かない人もいる。
 冒頭のトランスジェンダー云々を引いてくれば、一般的な性同一性障害(GID)の人なら性的指向は異性に向くので、ヘテロと同じだ。性自認も、同じと言える。生物学的な性が、「普通の人」と違うだけである。「だけ」といっても、この性自認と生物学的な性が違うという状態が、非常に大きな苦痛を産むわけですが。
 GID を病気や性癖と同じように思っているようだけど、あきれるほどに短絡的ですね。なんとなくの感覚だけで発言しているのがよくわかる。根拠がなく、当事者へ思いを致すこともない。
 どこにどのような治療が必要だというのかなぁ。おそらく、そんな指摘すら的確にできないだろう。病気などではないので、指摘できなくて当たり前なんだけど。それでも「精神が...」とか言い出しちゃったりするんだよね。

 続いて、レズ、ゲイ、バイセクシャルは性癖だという決め付け。もちろんそんな事実はないし、性癖などではない。仮にそれが性癖と呼ぶべきものだとするならば、男が女を、女が男を好きになるということもまた、性癖と呼ばなければならない。誰かが誰かを好きになることは、性癖か?
 こういうの、何を根拠にしてるんでしょうね。まぁ、根拠はないんだけど。ないものは、示すこともできないけど。
 しかし、彼らがしばしば根拠だと思っているものは、いくつかある。
 例えば「生物は子孫を残すことが目的であって、その目的から外れるものは正常ではない」などといった主張があるけれど、これは根拠ではない。それっぽい理屈を、それっぽく吐いているにすぎない。「生物は子孫を残すことが目的」なんて、誰が決めたんだ?
 いや、子孫を残すことは大切な営みではあるわけです。太古より延々と受け継がれてきた、今も絶えることなく続いているものです。生物全体として見れば、ね。
 しかし生物は、それだけが目的で、ひたすら効率を求めるものじゃない。遺伝子というものには、ゆらぎがある。それを含めて、生物は生物足り得るのだ。それがなかったら、その種はむしろ絶滅するだろう。

 ゲイやレズビアンは、性的指向が同性に、バイセクシュアルは両性に向くというだけのこと。性的指向が自分と同じではないからといって、それが正しくないとなぜ言えるのか?
 生まれ持った変えようのないもののひとつが、性的指向だ。性を表現するものは3つあるが、そのうち外部からの力で変更可能なのは、生物学的な性だけである。GID を含んで「トランスジェンダー」については理解できるという人がいるが(この主張の歪みはともかく)、おそらくは、だからこそ、まだ理解しやすいのだろう。
 しかし残りのふたつ、性自認と性的指向は、変更のしようがない。そんなに簡単に変わるものなら、ヘテロの皆さんだって簡単に同性愛者になれますよねー?
 ほんで、「自分と違うセクシュアリティ」を性癖としか見ていないので、SM を例に引いてくるという意味のわからなさ。同列に語ることのできない事項でもって、物事を比較したり例えたりするのは、歪なやり方だろう。
 しかも、SM クラブに通っているヘテロのサラリーマンは結婚できる(もしくはしている)。また、それに伴う法的な保証もありますよ。のっけから、そしてあらゆる点で、セクシュアルマイノリティと比較するには不適当ですね。

 さらにツッコミを入れておきます。
 保護がどうとか言っているけれど、これもおかしな話だ。
 確かに、「保護」のような主張をする人はいる。当事者というよりも、それに関わろうとする第三者に。
 でもね、法的に「保護」する必要はない。「保護」ではなく、生きる上で認められてしかるべきものが認められない状態に放置されているので、それを是正するべきであろう、と。「ヘテロの人たちと同じように、普通に生きたい」と願う当事者が望んでいることとは、一線を画す。
 同じ人間として、当たり前のことを言っているにすぎないのだ。保護しろと言っているのではなくて、当然認められているべきものを認めてよ、と言っているだけなのだ。
 ただそれだけのこと。

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